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2002年6月議会スカイネットアジア航空への補助金支出について反対討論(2002年7月1日)

 私は社民党県議団を代表して補正予算第1号スカイネットアジア航空への補助金支出について反対の立場で討論に参加します。
 高額な航空運賃が本県発展の足かせとなっており、景気低迷の今日、低運賃化は県民の悲願であります。
その是正に向け若手のみなさんがベンチャー精神に基づき、幾多の困難を乗り越え、新規航空会社を立ち上げられたことに対し、深く敬意を表したいと思います。
 また、高く評価するものであります。しかし、県民の税金を投入する支援ということになれば「公益上必要があるのか」という地方自治法232条の2項に照らしてみる必要もあり、慎重な検討もしなければなりません。
 そこでまず、検討しなければならないのは安全性の問題であります。航空会社のチェックポイントは低料金より安全性であります。 
その安全性のチェックポイントは航空機の整備力であります。
 その航空会社が格納庫を保有するか、予備機を持っているのかも、その判断に重要な意味を持ちます。外国の整備は昼間に行われます。それは予備機が多いので整備とフライトが同時に可能となります。日本では予備機が少ないので夜間整備が主流となります。アメリカは予備機を日本の倍、保有しているそうですが、それでも日本航空は140機のうち40機は予備機です。SNAの場合、予備機はありません。たった2機で一日6便が計画されています。往復3時間、それに地上停留時間(グラウンドステイタイム)や機内整備を入れると最低4時間としても一機は一日12時間稼働となります。いつ整備するのか、夜間しかありません。しかし、台風や雨の多い本県、寒風吹き荒れる冬場の宮崎空港。考えてみてください。格納庫なしに保守点検や整備が十分にできるのか。格納庫は安全施設です。今からでも整備するというのであれば理解もできます。雨・風等の気象条件に左右されずに、夜間に整備を実施するために、また、機体の塩害防止や、台風防護、腐食防止、などのためにも、是非とも必要な施設であります。
 1級航空整備士も60歳以上の定年者と聞きます。さらに航空法に定められた定期整備、50時間、100時間、1000時間点検や定期検査、また、予測困難なTCD検査 (国土交通大臣整備命令検査)という、同機種が地球上のどこかで故障を起こした場合の2週間以内の緊急検査などもあり、予備機なしでの定期運行は不可能であります。せいぜい2機では、4便が関の山です。なぜならジェット機の稼働率は85%といわれます。旅客機も機械である以上いろいろ故障、点検が必要になり、重整備もあります。6便運行では、これらの整備に無理がかかります。また、予備機がない現状では欠航が相次ぐことになり、利用者の信頼性が損なわれることにもなります。
 後発のAirDO、SKYmarkは、整備を大手のライバル会社に委託した。ライバルの委託だから高い。その経費をSNAは自社整備でコストを下げるという。しかしこれでは外部からのチェックが入らない。稼働率を上げるために無理をしたとしても外部からは見えません。
 もう一つは、パイロットです。60歳以上のパイロットが中心になっています。国際民間航空機関(ICAO)基準では国際線は58歳までとなっており、国内線は60歳までとなっています。ただ、特例で国内線は63歳までが、加齢パイロットとして認められています。加齢パイロットは経験が豊かですが、突然死や突発的な発病などの発生率が高いことから年齢制限されているのです。60歳以上は飛行中の突然死などを防止するために厳しい航空身体検査を受けなければなりません。(6か月に1回、若いパイロットの2倍の身体検査項目)また、もし身体検査に不合格になれば機長が不足しフライト計画が狂うことになりかねません。
 こんな話も聞きました。パイロットの給料は高い。しかし、航空大学校卒業生は就職難なのに、SNAには行かない。その理由は「不安だから」だそうです。
 つぎに経営の見通しについてであります。
 資本金の1.5倍の資金がないと航空会社は立ち上げできないというのが業界の常識だそうです。
県は国の審査を理由に経営は大丈夫とおっしゃっています。国の審査は、規制緩和によって法律が変わり、新規参入が容易となりました。今までの免許制から許可制になり、当然需給調整も撤廃されました。従がって、後は経営努力次第ということになっていて、厳しい経営チェックは義務づけられていません。
 みなさん、この35年間で バスの運賃値上がり率は13倍、新幹線は6倍になっていますが、航空定期運賃は2倍です。さらに特割り等で最大50から70%まで値引きされています。場合によっては35年前の運賃より航空運賃は安くなっているのです。並大抵の努力では儲からないわけです。
 そこで重要なのが、経営チェックのポイントとなる搭乗率であります。現在の宮崎、東京線の平均搭乗率は、53%を割り下降線をたどっています。最近でも最高は58%にすぎません。SNAの搭乗率見込みは初年度55%、5年目に63%で黒字に転換するとなってますが、それはあり得ない数字です。福岡では長崎、佐賀から利用者を呼び込むこともできましたが宮崎の場合、鹿児島から呼び込むことは考えられません。
 またすでに、東京-宮崎線は激安パックなど低額になっており、特割り制度もあります。しかも、観光客も宮崎着、鹿児島発などいわゆる鹿児・宮便が主流を占めており、ほかの航空会社との連携もないSNAが60%以上になることは長期的に見ても考えられません。
 資金繰りについても見通しは立っていません。補助金は準備資金の一部とはいうものの、航空機リース代など、これまでの負債整理に当てられるもので、直ちに経営難に陥ると見るべきです。8月1日から開業となっていますが、7月に10回に及ぶ国土交通省の実証フライトが義務付けられており、この厳しい試験にパスするか否かも、重要な補助金支出の判断になります。
私たち県議会は、いまこそ、チェック機能を発揮しなければならない、重大な事態に直面しています。シーガイアの教訓を生かさなければなりません。ここ2−3年で倒産することになれば、公金支出の根拠となっている公益性が担保されず地方自治法232条の2項に違反することになります。さらにこの条文は、財政にゆとりがあることを条件にしており、今日の厳しい財政難のなか、8億円という金額が本県にとって、ゆとりがあるとは考えられません。8億円もあれば県民福祉の充実にどんなことができるか、考える必要があります。県は今回の補助金支出にあたって重要な資料の提供を拒みました。ようやく提出されたのは6月25日の常任委員会審査が始まった日であります。しかも、経営に関する部分の一部であり、もっとも大切な安全性に対する資料は、ないのに等しいのであります。議会に十分な審査時間を、与えもせず、結論を急がせる行政手法に怒りを覚えます。
 私たちは8月1日のオープンに、とらわれることなく、安全で安定した航空会社をつくり育てるためにも、十分な審議時間がほしいのです。
 私たちはいま、こうした十分な審議がなされないなかで、賛否を求められればノーとしか答えようがありません。以上討論を終わります。


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